元本確定前の根抵当権

・根抵当権者又は債務者に相続(合併)の開始があった場合、元本が確定するか否かが未了の間は、全部譲渡することはできない。

・元本の確定前に根抵当権者について相続が開始したときは、根抵当権は、相続の開始の時に存する債権のほか、相続人と根抵当権設定者との合意によって定めた相続人が相続の開始後に取得する債権を担保する。相続開始後の相続人の被担保債権も当然に担保されるとすれば、設定者は相続人との間で被相続人と同様の信頼関係を継続できない場合もあることから、不利益を被るおそれがある。そのため、設定者が合意の当事者となる。

・指定根抵当権者の合意を経ても、根抵当権は依然として根抵当権者の地位を相続した相続人全員の共有状態にあることは変わりはない。指定根抵当権の合意の登記がされても、相続開始後に指定根抵当権者と債務者の取引によって生じる債権を根抵当権で担保することとなるに過ぎない。すなわち、指定根抵当権者の合意とは、被担保債権の決定基準としての根抵当権者の変更に過ぎず、根抵当権の主体を変更させるものではない。

・被相続人A、法定相続人BCD、被担保債権の承継人Dの場合、根抵当権がDの単独所有となることを意味しない。元本確定前の根抵当権の相続では、合意によって定めた相続人が相続開始後に取得する債権も被担保債権とすることができる関係上、根抵当権者の地位が、一種の財産権として、被担保債権とは別に相続の対象となると解されている。したがって被担保債権を承継したDの他、法定相続人BCDも根抵当権者の地位を相続する相続人として根抵当権者となる。

・確定前の根抵当権に関して根抵当権者が死亡した場合、被担保債権を承継しない相続人であっても、根抵当権は承継することができる。

 

遺言書

自筆証書遺言

・遺言者が遺言の全文、日付、氏名を自署し、これに押印することが必要。日付、氏名、押印の一つでも欠けると無効となる。

・ワープロ、タイプライターで打たれた場合は自署には当たらない。

・遺言の全文、日付及び氏名が、カーボン紙を用いて複写の方法で記載された場合は自署に当たる。

・印は拇印・指印・認め印でよい。封筒の封じ目に押印したものでもよい。

・日付として年月までの記載しかない自筆証書遺言は、作成された日が他の証拠から明らかな場合でも、無効である。

・自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。変更の効力が生じないのであって、無効となるものではない。

 

公正証書遺言

・証人二人以上の立会いが必要。未成年者、推定相続人、受遺者、これらの配偶者、直系血族、公証人の配偶者、4親等内の親族等は証人になることができない。成年被後見人、被保佐人、遺言執行者、盲人は証人適格者である。

・作成した遺言書は、公証役場で原本が保管され、本人が謄本を保管します。もし本人の保管分が紛失しても、公証役場で原本が保管されているので安心です。遺言者死亡後、相続人は、公正証書遺言が作成されているか否かを、全国どこの公証役場でも検索することができます。遺言書の作成には費用がかかりますが、公証人がその作成のかかわりますので、安全です。また自筆証書遺言と異なり、遺言者死亡後に家裁による検認の手続きも不要です。

 

秘密証書遺言

・秘密証書遺言は自署が要求されていないので、ワープロでも可

・遺言者がその証書を封じて、証書に用いた印章と同じ印章で封印すること

・遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の面前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名・住所を申述すること。

・公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封書に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、押印すること

・秘密証書遺言は上記の方式に欠けるものがある場合は無効であるが、それが自筆証書遺言としての方式を具備していれば、自筆証書遺言としての効力が認められる。

・秘密証書遺言は、封印が絶対なので、家庭裁判所で検認だけでなく「開封」の手続きを要する。

 

遺言の効力

・成年被後見人が、後見の計算終了前に、後見人、その配偶者、直系卑属の利益となるべき遺言をしたときは、無効となる

・相続人のうちの1人に対して財産全部を相続させる旨の遺言がされ,当該相続人が相続債務もすべて承継した場合,遺留分の侵害額の算定においては,遺留分権利者の法定相続分に応じた相続債務の額を遺留分の額に加算することは許されない

・被告は相続欠格者であって,原告が唯一の相続人として被相続人の共有持分を相続したと主張する原告の共有持分確認請求訴訟において,被告は,日付の記載のない遺言書に,被相続人の意思に基づかずに日付を記載し,未だ有効に作成されたものとはいえない遺言書を外形を整えて完成させたのであり,民法891条5号にいう変造をした者に当たるとして,原告の請求を認容した

 

遺言書の検認

遺言書の保管者や、これを発見した相続人は、遺言者が亡くなったら、すみやかに遺言書を家庭裁判所(遺言者の最後の住所地の家庭裁判所)に提出して、その「検認」を請求しなければならない。
検認とは、相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。遺言の中身についての有効、無効を判断するものではないため、検認後に有効、無効を争うこともできます。
また、封印のある遺言書の場合、家庭裁判所において相続人またはその代理人の立会いがなければ、「開封」できません。相続人や代理人が立会い、検認を受けると「検認調書」が作成されます。検認に立ち会わなかった相続人などに対しては、検認されたことが通知されます。
なお、検認手続きが必要なのは自分で作成・保管する自筆証書遺言と秘密証書遺言であり、公証役場で作成・保管する公正証書遺言は偽造などのおそれがないので、検認手続きは必要とされません。

遺言書を家庭裁判所に提出することをしなかったり、その検認を経ないで遺言を執行したり、家庭裁判所外において開封をした場合は、五万円以下の過料に処せられます。遺言自体は無効にならないのですが、行政罰を受けます。
また、遺言書を偽造、変造、破棄や隠匿した人は、相続欠格者となります。

 

遺言執行者

遺言書を書く人は、遺言執行者を指定することや、遺言執行者を決めることを委託することができます。この遺言執行者に指定された人は、相続財産の管理や、その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を持つことになります。したがって、遺言執行者がいる場合には、相続人といえども、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることはできません。
また、遺言執行者がいないときや亡くなった場合でも、相続人や受遺者などの利害関係人が請求すれば、家庭裁判所が選任してくれます。なお、未成年者および破産者でなければ、相続人や受遺者も遺言執行者になれますが、高齢者、遠くに住んでいる方やサラリーマンの方の場合、煩雑な作業が大きな負担となります。不動産や預金の名義変更などだけでも、大変な手間がかかります。また、相続人等の利害関係者ですと中立の立場にあっても、そう思わない他の相続人も現れることもあります。そのため司法書士などの専門家に依頼することも選択肢の1つとなるでしょう。
なお、遺言執行者の指定がないと、預貯金の解約などに銀行所定の書類への相続人全員の押印や遺産分割協議書と、印鑑証明書の提出を求められるのが一般的です。遺言執行者の指定があれば、押印は遺言執行者だけで預貯金の解約などを認めるのが一般的です。ただし、相続人や受遺者が遺言執行者にもなっている場合には、銀行によっては、遺言執行者の押印だけによる預貯金の解約に応じない場合があります。

遺言執行者は、遺言を書く人や利害関係人が望んでいる場合に必要だということになります。そのため、遺言の執行には必ず、遺言執行者が必要というわけではありません。ただし、次のような場合は遺言執行者が必要となります。
① 子供の認知
② 相続人の廃除・廃除の取り消し

 

付言事項

遺言書の内容は、必ずしも法定相続分どおりとは限りません。それは、遺言者の考えがあってのことでしょう。しかし、財産をあまりもらえない相続人には、その意図や想いがわからず、遺言者を恨み、結果として相続人間にしこりを残す可能性があります。そこで、遺言書の最後に、財産の分け方の理由、自分の想いなどを書いておき、自分の死後に新たな紛争が生じないように気を配ることも大切です。

 

・遺贈を登記原因とする所有権移転登記の登記原因証明情報としては、戸籍と遺言書が必要。報告形式の登記原因証明情報だけでは足りない。遺言は要式行為。登記官が民法所定の要式を確認する必要がある。

 


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抵当権の効力を及ぼす変更と及ぼさない変更

A・Bが共有する不動産のA持分に甲を(根)抵当権者とする(根)抵当権が設定登記された後に、Aが共有者Bから持分を取得し、当該不動産がAの単独所有となった様な場合、(根)抵当権者甲とAが、AがBから取得した持ち分に対しても(根)抵当権を追加設定した。
この様な場合に、所有権の一部を目的とした(根)抵当権の設定の登記は原則不可なので、することになる登記が(根)抵当権の効力を所有権全部に及ぼす変更登記

これに対して、A・B共有の不動産のA持分に(根)抵当権を設定した後、B持分にも(根)抵当権を追加設定した場合には通常の(根)抵当権の追加設定の登記を申請することになる。

ちなみに、以上の「及ぼす変更」登記をした場合、オンライン指定の登記所では登記識別情報は発行されない。

 

 

A・Bが共有している不動産の所有権全部を目的とした(根)抵当権が設定登記された後に、(根)抵当権者がB持分を目的とした(根)抵当権を放棄した場合や、A単独所有時に(根)抵当権を設定登記した後に、BがAから所有権の一部を取得しA・B共有となった後に(根)抵当権者がBの持分を目的とした(根)抵当権を放棄することにより当該(根)抵当権はA持分のみを目的とした(根)抵当権とする事(いわゆる及ぼさない変更)が出来る。(根)抵当権の一部が消滅したので一部抹消と考えられるが、権利の一部抹消は出来ないので変更の登記をすることになる。
この及ぼさない変更は実質的には抵当権の一部抹消なので不動産登記法68条により必ず付記登記で実行されることになり、登記上の利害関係人がいる場合にはかならずその者の承諾またはその者に対抗することができる裁判があった事を証する情報の提供が必要となる。

判決による登記(仮差押・仮処分含む)

・判決による登記の単独申請は、意思表示をすべきことを債務者に命ずる裁判等による広義の強制執行と位置付けられ、共同申請の当事者の一方の申請意思を判決等によって擬制するものであるため、その判決等の内容は「共同申請しなければならない者の一方に登記手続をすべきことを命ずる」給付判決でなければならない。

・執行分は判決が確定していることを確認した上で付与されるため、確定証明書は不要。

・判決による登記は、本来共同申請すべき登記について、当事者の一方の申請意思を判決等によって擬制することで単独申請を可能とするものであるため、相続を原因とする移転登記のように、本来的に単独申請が予定される登記については、そもそも申請の意思表示を擬制する必要がない。

・裁判訴訟において、確定判決が出て決着するまでには時間がかかるために、権利を保全するために暫定的な処分行うもので、仮差押が金銭債権を対象するのに対し、仮処分は金銭債権以外の権利を保全する。

・仮処分債権者が本案訴訟において勝訴して、仮処分後の第三者の登記と内容において抵触する登記が仮処分債権者のためになされるときには、この登記の申請と同時に申請する場合に限り、仮処分債権者は、この第三者の登記の抹消登記を単独で申請できる。

・処分禁止の登記に遅れる登記の抹消を申請する場合には、登記の抹消に係る登記原因証明情報の提供は不要であるが、抹消される登記の名義人に対して、その登記を抹消する旨を通知したことを証する情報(内容証明+配達証明。ただし1週間の到達擬制あり)の提供が必要となる。→仮処分に後れる登記を抹消する旨の通知を発した日から1週間経過後に登記の抹消を申請する場合には,抹消の申請情報と併せて内容証明郵便で通知書を発したことを証する情報を提供すれば足り,配達証明書の提供は不要。

・AからBへの売買による所有権移転登記をする前にAが死亡した場合、買主BがAの相続人Cに対して処分禁止の仮処分命令を得たときは、債務者の表示および仮処分の登記義務者の表示が「被相続人Aの相続人C」となっていれば、処分禁止の仮処分の登記の前提として相続登記をすることを要しない

・「占有移転禁止の仮処分」とはAが他の第三者に対して占有を移転することを裁判所が禁止する命令(仮処分命令)のこと。仮処分が執行されると(実際に執行官が現地に行き、対象の部屋に「占有の移転を禁止する」旨の張り紙等をする)Aに訴え提起してAさん名義の判決文を債務名義としてAさんに対する建物明け渡しの強制執行を申し立てた場合に、現地に執行官が臨場した場合に部屋の中にA以外の第三者(B)が住んでいたとしてもBに対して強制執行による明け渡しをさせることができる。

 

共同根抵当権

共同根抵当権の追加設定の請求原因事実は

1 既登記と同一債権を担保するため(既登記の根抵当権と同一の根抵当権者、債務者、債権の範囲、極度額を定めること)

2 設定者が有する目的物について

3 設定者と根抵当権者が根抵当権設定契約をなし

4 設定登記と同時に同一債権の担保として複数不動産につき根抵当権が設定された旨の登記(共同担保である旨の登記)をした事実である

 

抵当権の設定契約の請求原因事実は

1  被担保債権の発生原因事実

2    設定者の有する設定目的物

3  設定者と1の債権者とが、1の債権を担保するため抵当権設定契約締結

 

普通抵当権の追加設定では、被担保債権が同一であれば、当然に共同担保化されるため、根抵当権の場合と異なり、共同担保化についての当事者の意思や登記を考慮する必要がない

 

・共有不動産を第三者の単独申請とする所有権移転登記の申請は、共有持分につき第三者の権利に関する登記があるときは、同一の申請情報ですることができない。

遺産分割

・登記原因となる法定相続の要件事実

  1. 被相続人の死亡
  2. 死亡時に相続人であること
  3. 対象となる権利・義務を被相続人が有していた事実

・法定相続で相続人が数人ある共同相続となった場合、相続財産は遺産共有の状態となり、相続財産に属する個々の財産の最終的な割付は遺産分割によることになる。

・遺産分割は、相続開始の時に遡ってその効力を生じるから、遺産分割により相続人が取得した財産は、相続開始時に直接被相続人から単独で承継したことになる。従って、未だ共同相続の登記がなされていない不動産について、遺産分割があった場合には、分割により当該不動産を単独取得した相続人が、直接自己名義に「相続」を原因として移転登記を申請することが認められている。

・遺産の分割は、相続開始の時に遡って効力が生じるが、第三者の権利を害することはできない。第三者は善意悪意を問わないが、対抗要件を具備していることを要する。

・遺産分割協議は特別の方式は要求されておらず、必ずしも共同相続人が一堂に会する必要もなく、例えば持ち回り協議のような方式も認容されている。また、相続財産のすべてについて同時に行われる必要もないと解されている。また、協議の内容に関しても、協議分割では、審判分割の場合と異なり、法定又は指定相続分に拘束されず、分割の方法にも制約がないと解されている。各相続人は、相続財産上の権利を処分する自由を有し、相続分と異なる割合による分割協議も当事者の真意に基づくものである限り有効と解されているからである。

 

遺産分割協議書へは、相続人全員が署名および実印による押印をし、印鑑証明書を添付します。しかし、相続人が海外に住んでいて印鑑証明書の交付を受けられない場合、印鑑証明書の代わりにサイン証明(署名証明)を利用することになります

サイン証明とは、海外在留で日本には住民登録をしていない方に対し、日本の印鑑証明に代わるものとして発給されるもので、申請者の署名(及び拇印)が確かに領事の面前でなされたことを証明するものです。

具体的な手続としては、遺産分割協議書を在外公館(外国にある日本国大使館、総領事館)に持参して、領事の面前で署名および拇印を押捺し、遺産分割協議書と署名証明書を綴り合わせて割り印をします(奥書認証)。

なお、遺産分割協議書への署名は領事の面前で行う必要がありますから、事前に署名をせずに持参しなくてはなりません。

サイン証明には、上記と合わせて2種類の方法があります。

  1. 持参書類(遺産分割協議書)とサイン証明を綴り合わせて割印し、一体の書類としたものに奥書認証するもの
  2. 申請者の署名を単独で証明するもの(サイン証明のみを単独で発行)

登記申請に使う場合は、原則として1の方法によるサイン証明を使用します。

 

・弁済時点において、根抵当権が元本確定前の状態であれば、被担保債務の全部について弁済があっても、弁済にかかる債務が消滅するのみであって、根抵当権は消滅しない。元本確定前の根抵当権では、被担保債権に対する付従性が切断されているからである。

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依頼者が登録免許税を支払わないまま破産した場合

依頼者が登録免許税を支払わないまま破産した場合

破産者に代わり国に対する租税債権を代位弁済した場合

当該租税債権について弁済による代位が生じるか(東京地裁平成27年11月26日判決)

 

弁済による代位は債権の移転を伴うものであり、債権の性質上譲渡することが許されない債権については弁済による代位が否定されるところ、租税債権は、私法上の債権のように債権自体の譲渡による換価が認められていないことや、税負担の公平の観点から債権回収に特色があることなど、公法上の債権として私人間で直接行使することが予定されていないから、権利の性質上、私人に対する譲渡が許されない債権というべきであり、弁済による代位の対象とはならないというべきである。

 

第474条
① 債務の弁済は、第三者もすることができる。ただし、その債務の性質がこれを許さないとき、又は当事者が反対の意思を表示したときは、この限りでない。
② 利害関係を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。

超訳

① 債務の弁済は債務者だけでなく、第三者でも債務者に代わってすることができる。ただし、債務の性質が第三者弁済を許さない場合や、契約当事者の特約で禁止した場合は、第三者による弁済はできない。
② 法律上直接の利害関係のない第三者は、債務者の意思に反して弁済できない。

 

解釈・判例

1.第三者の弁済の意義
(1) 「第三者の弁済」とは、第三者が自己の名において、他人(債務者)の債務として弁済することである。
・自己の債務として弁済するときには、非債弁済(705条)となる。
・他人の債務として弁済されたかどうかは、第三者の意思だけで決するのではなく、諸般の事情によって客観的に決定する。
・第三者の弁済は、第三者が自己の名において弁済するものであるから、債務者本人の名においてなす場合は権限がない限り、無権代理となる。
(2) 第三者の弁済は、本来の意味の弁済に限らず、代物弁済・供託も含まれる。ただし、他人の債務について、第三者が債権者に対して有する債権をもって相殺をすることは許されない(大判昭8.12.5参照)。

2.第三者の弁済の制約
(1) 債務の性質による制約(1項ただし書前段) 債務の給付が、債務者本人でなければならない場合には、第三者弁済が許されない。例えば、学者の講演・名演奏家の演奏・芸術作品の創作などである(一身専属的給付)。
(2) 当事者の意思表示による禁止(1項ただし書後段)
・契約により生じた債務については特約により、単独行為により生じた債務については一方的意思表示をもって、第三者の弁済を禁止できる。これにより利害関係のある第三者でも弁済できなくなる。
・特約は契約と同時にしなくても差し支えないが、第三者による弁済の前にしなければならない。
・当事者が第三者による弁済を禁じた場合でも、保証人は自己の保証債務の弁済をなすことができる。
(3) 利害関係を有しない第三者の債務者の意思に反する弁済の禁止(2項)。
・利害関係を有する第三者とは、借地上の建物賃借人(敷地の地代弁済について・最判昭63.7.1)、物上保証人、後順位担保権者、担保目的物の第三取得者などのように、弁済をすることについて法律上の利害関係を有する第三者をいう(最判昭39.4.21)。これに対して、債務者と親族関係・友人関係があるにすぎない者は、利害関係を有しない(大判昭14.10.13)。
・「債務者の意思に反して」とは、第三者の弁済当時に債務者の意思に反することを意味する。この債務者の意思は、債権者または第三者の対して予め表示されていることを要しないし、第三者がこれを知らなくても構わず、諸般の事情から認定されればよい(大判大6.10.18)。

3.第三者の弁済の効果
(1) 第三者弁済が有効であるときは、債権は消滅する。ただし、この第三者が債務者に対して求償権を有する場合には、この求償権を確実にするために、弁済によって消滅すべきであった債権及びこれに伴う担保権などは、求償権の範囲内で弁済者に移転する(499条~501条)。
(2) 第三者の弁済が許されない場合には、弁済は無効となる。したがって、債権者は弁済の提供を拒絶することができ、仮に受領しても、弁済者に対する不当利得となる。

第三者のためにする契約

・所有権の移転先の指定及び被指定者に対する直接移転にかかる部分から、本件売買契約は第三者のためにする売買契約と解される。第三者のためにする契約とは、契約当事者が、自己の名において結んだ契約によって、直接第三者に権利を取得させる契約をいう。この契約により第三者が取得する権利は、一般的には債権であるが、判例・通説によれば、第三者に直ちに物権を取得させる契約も有効とされる。第三者の給付債務者に対する受益の意思表示が、第三者のためにする契約による権利取得の効力要件となっている。

 

根抵当権と会社分割

・分割会社が元本確定前の根抵当権者又は根抵当権の債務者である場合の根抵当権の権利変動は、その根抵当権又は根抵当権の被担保債権が分割契約書(又は分割計画書)に承継権利義務として記載されているか否かにかかわらず、当然に発生する。よって会社分割の効力が生じたことを証明できる登記事項証明書のみで会社分割による根抵当権の権利変動を証明できる。

・根抵当権の共有者の権利については、一部譲渡や分割譲渡は認められない。共有者の権利の全部譲渡契約における譲受人は、原則として1名に限られる。ただし、共有者の1名がその権利を他の共有者に譲渡する場合、他の共有者が複数いるときでも、これら全員を譲受人とする全部譲渡が認められ、かつ、譲受人は他の共有者全員でなければならい。

・根抵当権の共有者は、原則として配当時点において有する債権額の割合で按分し、極度額を限度として優先弁済権を行使する。

・不動産登記法74条第2項の「表題部所有者から所有権を取得した者」には、会社分割による分割承継会社も含まれる。会社分割による登記は売買と同様、本来、共同申請すべきものであり、冒頭省略保存登記を認める趣旨に適合する登記原因だからである。

・吸収分割による承継を登記原因とする所有権移転登記の申請においては、分割契約書および会社分割の記載がある分割承継会社の登記事項証明書を登記原因証明情報として提供しなければならず、分割契約書のみをもって登記原因証明情報とすることはできない。吸収分割の登記は、会社分割の効力発生要件ではなく第三者対抗要件に過ぎないが、第三者対抗力を有していない会社分割に伴う物権変動を登記することは妥当でないからである。

相続の承認・放棄

相続の開始によって、当然に相続の効果が相続人に帰属するが、相続人は、これを①無条件に相続するか②相続によって得た積極財産の限度においてのみ、被相続人の債務及び遺贈を弁済するという留保つきで承認するか③相続による効果の帰属を全面的に拒絶するかの自由を有する。

①を単純承認、②を限定承認、③を相続放棄という。

相続の承認・放棄は、相続財産について包括的になされなければならず、その一部についてのみ、承認・放棄することは許されない。

相続の承認・放棄は、相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内になされなければならない。これは、相続人が相続財産の内容を調査して、相続の放棄や限定承認をするかどうかを考慮する時間を認めたのである。熟慮期間の起算点である「自己のために宋族の開始があったことを知った時」とは、相続の原因たる被相続人の死亡の事実を知り、それによって自己が相続人になったことを知った時をいう。相続人が、相続財産が全く存在しないと信じており、そう信ずるについて相当な理由がある場合には、本条の熟慮期間は、相続人が相続財産の全部または一部の存在を認識した時、又は通常であればこれを認識することができる時から起算する。

相続人が数人いる場合、この3ヶ月の熟慮期間は、相続人がそれぞれ自己のために相続の開始があったことを知った時から、各別に進行する。

相続の承認・放棄の効力は確定的であるから、いったんなした承認又は放棄は、熟慮期間中でも撤回することはできない。

 

①単純承認

単純承認が行われると相続財産は、相続人の固有財産と完全に融合しますので、被相続人の債務の弁済は、被相続人の遺産で足りなければ、相続人の固有の財産からも弁済を行わなければなりません。

単純承認は、相続放棄や限定承認の手続と異なり家庭裁判所への申述などの手続きは必要ありませんが、一度選択した相続方法は原則として取り消すことができませんので被相続人の遺産を調査する際には慎重に調査を行い、債務超過状態にある遺産を相続しないように十二分に気をつけることが必要です。

また、単純承認の意思表示がなくても、以下の場合には、相続人は単純承認したものとみなされます。

  1. 相続人が相続財産の一部または全部を処分したとき
  2. 相続人が民法915条第1項の熟慮期間内に限定承認・相続放棄もしなかったとき
  3. 限定承認または放棄をした者が、その後に相続財産の全部または一部を隠匿し、ひそかにこれを消費し、または悪意で財産目録に記載をしなかったとき

よって、賃貸人の相続人が賃借人に賃料の支払いを求めたり、債権を取り立てたりした場合は単純承認とみなされます。

 

②限定承認

単純承認は相続債務について相続人が無限責任を負うことになりますが、限定承認は、債務の過大な承継から相続人の利益を守る為に、相続財産を限度とする有限責任に転換する制度といえます。

限定承認をした相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務を弁済すればよく、例え相続財産より債務の方が上回っている場合であっても単純承認の場合のように自己の固有財産をもってまで債務の弁済をおこなう必要はありません。

但し、限定承認を行ったとしても相続債務が消滅するわけではありませんので、相続人が任意に弁済を行った場合にはその弁済は有効となり、非債弁済とはなりませんので注意が必要です。

非債弁済とは、債務が存在しないにもかかわらず、弁済として給付を行うことをいいます。民法は第705条において、債務が存在しないことを知りながら弁済を行った者はその給付したものの返還請求を行うことができないと定められています。
債務がない場合に弁済を行った場合、本来は不当利得として返還請求を行うことができるのが原則ですが、債務者が給付を行ったときに債務の存在していないことを知っている場合にはこれを保護する必要はないとしています。

1.申述人

相続人全員が共同して行うことが必要です。

2.申述期間

自己のために相続が開始したことを知ったときから3ヶ月以内に行うことが必要とされています。

3.申述先

被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。

4.申述に必要な費用

  • 申述人ひとりにつき収入印紙800円
  • 連絡時に必要となる郵便切手

5.必要書類

  • 相続の限定承認の申述書1通
  • 申述人の戸籍謄本1通
  • 被相続人の除籍謄本1通、住民票の除票1通
  • 財産目録1通
  • ※事案によってはこの他にも必要となる書類があります
財産目録の作成について

財産目録を作成する際には積極財産と消極財産を細大もらさず性格に記載することが必要です。悪意で財産目録に記載しないような背信的行為がある場合には単純承認したものとみなされますので注意しましょう。

 

③相続放棄

相続放棄の制度は、債務超過状態にある相続財産の承継を免れる為の制度といえますが、実際の利用のされ方としては、特定の相続人に自分の相続分を譲るために利用しているケースも多くあります。
特定の相続人に相続分を譲渡する目的で相続放棄を行うときには、被相続人の親族関係を十二分に調査する事が必要です。予想もしていなかった相続人が出現する事で思わぬ事態に陥るおそれがあるからです。

例えば父親が死亡し、子供たちは各自が独立しているので母親に全てを相続させようと思い、子供たちが全員相続放棄した場合には、次順位の人が繰り上がって相続人となり、本来は分ける必要のなかった遺産の一部をその相続人に分割せざる得ない事態に陥ることがあります。一度行った相続放棄は原則として取り消すことができないので慎重に行う事が必要です。

1.申述人

  • 相続人(相続人が未成年者または成年被後見人の場合には、その法定代理人が代理して行います)
  • 未成年者とその法定代理人が共同相続人の場合であって未成年者のみが相続放棄を行うとき又は、複数の未成年者の法定代理人が一部の未成年者を代理して相続放棄の針術を行いうときには、 その未成年者について特別代理人を選任することが必要です。

2.申述期間

自己のために相続が開始したことを知ったときから3ヶ月以内に行うことが必要とされています。

3.申述先

被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所

4.申述に必要な費用

  • 申述人ひとりにつき収入印紙800円
  • 連絡時に必要となる郵便切手

5.必要書類

  • 相続放棄の申述書1通
  • 申述人の戸籍謄本1通
  • 被相続人の除籍謄本1通、住民票の除票1通
  • ※事案によってはこの他にも必要となる書類があります

 


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